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厚生労働省発表の「日本人の食事摂取基準」では、年齢や性別で異なりますが、カルシウム摂取量を通常の成人で目標量を600mg程度、目安量では600~900mgとしています。また、成長期には850~1100mgを目安量とし、さらに妊婦、授乳婦にも目安量をめざして摂取することを勧めています。しかし、日本人が実際に摂取しているカルシウムの量は、最近の調査では1日540mg程にとどまっていて、カルシウムを増やすべき栄養素の中に挙げています。「日本人の食事摂取基準(2005年版)」 カルシウムは、私たちの体の中に約1kgほど存在し、そのうちの99%が骨や歯の形成に使われています。残りの1%は血液中などに存在し、神経伝達に関与して筋肉の収縮や脳内の神経伝達系に重要な役割を果たしています。 カルシウム不足が骨密度を低下させ、骨粗鬆症の原因となるのはもちろんですが、その他にも生活習慣病や免疫、認知症などに密接に関与していると言われています。その理由を理解する上でキーワードとなるのが「カルシウムパラドックス」という言葉です。 パラドックスという言葉を辞書で調べると「逆説」とあります。つまり、普通の考えとは逆ということです。骨の構成成分であるカルシウムが不足する骨が弱くなるということは容易に予測でき、また、それは事実です。ところが、血管や脳内では、カルシウムが不足すると、その量が増えてくるのです。この一見、常識とは逆のこと、これがカルシウムパラドックスです。では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか? カルシウムが不足して血中のカルシウム濃度が低下すると、体の中ではその濃度を上げようとして、副甲状腺ホルモンや活性型ビタミンDなどがはたらきだします。副甲状腺ホルモンは骨からカルシウム取り出して、血中のカルシウム濃度を上昇させる働きをします。さらに副甲状腺ホルモンには細胞内にカルシウムを流入させる作用もあり、細胞内にカルシウムを押し込みます。 その結果・・・、 ①血管平滑筋にカルシウムが入り込み、血管収縮がおきて高血圧となります。また、血管壁 ではカルシウムが沈着することで動脈硬化となります。 ②通常、細胞の中と外ではカルシウム濃度に大きな差があり、この条件下で情報伝達がス ムーズに起こります。しかし、カルシウムが脳細胞中に必要以上に入り込んで、細胞内外の カルシウム濃度の差が小さくなると、伝達障害や組織障害が起きて認知症につながります。 ③尿路結石は、その80%がシュウ酸カルシウム結石で、一見、カルシウムの摂取はよくない ように思われます。しかし、最近ではカルシウムをとることが、結石の予防につながるとされ ています。シュウ酸は野菜などの食材に含まれる物で、通常はカルシウムと腸内で結合し、 そのまま吸収されずに便中に排泄されます。ところが、カルシウムの摂取量が少なかった り、脂肪酸など、ほかの陰イオンの摂取が多く、カルシウムがそちらと結合してしまうと、過 剰になったシュウ酸が腸から吸収され、尿中でカルシウムイオンと結合し、結石になると考 えられています。 ④免疫は人体に外から侵入してくるウイルスや細菌、異物に対して体を守る仕組みです。こ れは、免疫細胞であるT細胞、B細胞、マクロファージなどが情報を交換しながら正常に機 能します。この情報交換に重要な働きをはたしているのがカルシウムです。免疫細胞に必 要以上のカルシウムが入り込むと免疫機能が正常に働かなくなり、感染症を起こしやすくな ったり、アレルギーやリウマチなどの自己免疫疾患を起こしやすくなります。 一方、カルシウムの補給が十分だと、甲状腺からカルシトニンというホルモンが分泌されます。カルシトニンは骨に作用してカルシウムの血中への溶出を抑制し、骨へのカルシウムとリン酸の沈着を促進します。また、骨芽細胞に作用して骨からのカルシウムの取り込みを抑制します。その結果、血液中のカルシウムは減少します。適度なカルシウム補給は、高血圧や動脈硬化、認知症、尿路結石、アレルギー、リウマチなどの予防につながると考えられています。 厚生労働省は、カルシウムの摂取量を増やすべきとしています。上限を2300mg/日としていますが、日本人の通常の食事では過剰になることはまずありません。成長期や妊娠授乳期は、もちろんですが、骨粗鬆症が問題となる老後に備えて中年以降は十分なカルシウム摂取を心がけましょう。食事での摂取が基本ですが、それが困難な方はお薬や健康食品で補給することも大切です。 |
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